中堅統合失調症当事者が看護科学生の質問に本気で答える vol.2「病気と診断された後と診断される前ではどちらの方が気分が楽になりましたか?」

登山の途中休憩する女性
去年まで計5回某大学で統合失調症の当事者として講義をしてきました。

最初は当事者としての辛さを淡々とぶつけるような講義でしたが、徐々に客観的な視点や分析が入り、今では統合失調症の概要から発病体験、辛さやリカバリー論に至るまでのオールインワンの講義になりました。

それでもまだまだ改善点が見つかるばかりですが、大枠が完成したと思っています。

講義では最後に質問を募集しました。時間がなくすべて答えることができなかったため、こちらで回答していこうという試みになります。

※質問は事前にこのような形で利用しますと許可を取っているものです。

vol.2「病気と診断された後と診断される前ではどちらの方が気分が楽になりましたか?」

結論から言えば、診断された後の方が気分が楽です。

ただし、全体の傾向としては、気分が下がり続ける中で、ある点においてほっとできる状態になったという感じでしょうか。
診断された後も全体の傾向としては気分の底へ向かっていると思います。

つまり、診断は気分にプラスだが、全体を見ると下降傾向ということですね。

診断自体は気分にプラスな理由とは?

まず、診断自体は気分にプラスだということから。

統合失調の診断には、約6か月かかります。
これは、統合失調症のような症状が一時的に表れているだけなのか、
それとも本当に統合失調症なのか判断するためです。

そのため、明らかに統合失調症だろうと見て取れる状態のときに、
すぐに「統合失調症かもしれない」と言ってくれる医師と、
「まだ、診断には時間が足りない」と診断を留保する医師がいることと思います。

そのため、心持ちとしては、
①症状の洪水に溺れそう。自分の状態が何なのかわからない状態。
②統合失調症かもしれない。自分の状態が何なのか半分解明され安心と残りの半分の不安
③診断。統合失調症と判る。自分の状態が何なのか確定。不安解消安心。

もしくは、
①症状の洪水に溺れそう。自分の状態が何なのかわからない状態。
②診断はされないが、薬は出る。自分の状態が何なのかわからない。多分何らかの病気なのだろう。少しの安心と大きな不安。
③診断。統合失調症だと分る。自分の状態が何なのか確定。不安解消安心。

となります。

このように徐々に「自分が統合失調症であること」を知ります。
「この日にすべてを知った」という日はありません。

ただし、診断日、統合失調症と確定する日はそれでも大きな意味があります。

「統合失調症」という名前を聞くまでは、自分の状態が何なのかわからず不安です。
原因不明の状態かもしれない。
病気なのかもわからない。
ただ単に、いじめられているだけかも。

そこに病気だと分り、名前が付くと、自分の状態は何なのか。何が原因だったのかわかります。
また、病気であれば、治療法があり、今の状態からもとに戻れるかもしれないという希望が生まれます。

訳も分からない状態から、自分の状態を理解し、そこからの改善が見込めるようになります。

ほっとするのです。

全体で見ると気分の底に向かっている理由とは?

症状の波にのまれ、溺れそうな状態。
これは実は気分の底ではありません。

なぜかと言うと、自分の置かれた状況を理解して初めて気分の底へと向かうからです。

溺れそうな状態は、苦しいですが、ある種のパニック状態のようなもので、気分の底ではありません。
パニックの状態は頭が真っ白で、気分が落ち込む暇がないはずです。
気分が落ち込むのは、パニックが終わり、自分の状態を理解した時です。

そのため、気分の底は初発エピソード(最初の急性期:陽性症状が一番強い時)ではありません。
パニックが終わり、急性期が落ち着き、自分の状態を理解したときです。

統合失調症は、
①前兆期
②急性期
③休息期
④回復期
の4段階に大まかに分けられます。

気分の底は、急性期で体のエネルギーを使い果たし、体にパワーがなく、体がうまく動かせないという休息期です。
この時自分の状態を理解し、気分の底へと向かいます。

もっと詳しくするなら気分の底は、
何もできない休息期の底から、体はまだ自由ではないが、思考は自由になってきたころです。

このころはどうやら「統合失調症は完治しない」ということを理解しています。
自分の重症度も理解します。
人生や生活に与える影響も理解しています。

その中で体は思うように動かず、思考は自由。

体が思うように動かない現実と、状況の理解。
これが気分の底です。

診断のタイミングは、急性期から休息期前半

約6か月を統合失調症の4つの期間に当てはめると、

大体は、急性期から休息期初期だろうと思います。

それは急性期で受診し、薬が効いてきて、また環境が落ち着けるものになり、休息期に入っていくからです。

この6か月で、自分が統合失調症であることを理解し、気分の底に向かいます。

気分の底は回復の証。そこからもっと良くなるよ。

気分の底というのは、
何もかも動かないときから、
思考は自由になったときでした。

少し改善しているのです。

そこから体が少し動くようになり、
底でもモヤモヤしますが、

数か月をかけて、体も自由になってきます。

気分の底はパワーが回復してきた証拠なのです。

辛いとは思うけれど、大丈夫。

その先には希望がある。